

とりあえず二日分のお弁
朝、母から電話。
「台所の流しにあった小さい瓶知らない?」(母)
「知らないよ」(私)
「そこに歯が入っていたんだけど
昨日あなたが捨てちゃったでしょ」(母)
何を言っているかわけがわからない、、、。
確かに私は母の目を盗んでいろいろなものを捨てたことはある。
冷凍庫に入っていた食材、プラスチックのふた。
(ゼリーやプリンのプラスチックの蓋をまとめてとっておき
色々なふたにつかってしまうところがある。)
期限が過ぎてしまったセールのチラシ。
などなど、母の気持ちも考えずに、だんだん数がかさんで
不要なうえに邪魔になってしまうので捨ててしまっていた。
でもここ最近そんな小瓶らしきものは捨ててはいない。
「入れ歯だったら入れ歯入れに入れてるじゃない?
それがなくなっちゃったの?」(私)
「そうじゃなくてとれた歯を入れといんたんだ。」(母)
聞くと、昨日歯が一つとれてその歯を、今度歯医者さんに行くまで
とりあえず小瓶に入れてとっておいたそうだ。
その小瓶が無いんだという。
最近入れ歯も合わなくて痛いと言っていたので電話を切って
歯医者さんに予約を入れた。
父に事情を説明したら母を電話の向こうで叱り飛ばしている
声が聞こえる。
そんな一つの歯ぐらいで怒らなくても、、、。
父は母が物を無くしてしまうのがいまだに受け入れられないでいる。
以前にも母が入れ歯を無くした時かんかんに怒っていたっけ。
だからきっと母は父に内緒で私に電話してきたのだ。
昨日も、一昨日も実家に行っている。
さすがに今日は家の家事もたまっていたので実家には
いかないつもりだったのだが、、、。
父に歯医者の付き添いを頼んだのだけれどその時は
お風呂屋さんに行くから無理だという。
仕方がないので急いで家事を済ませ、買い物もとりあえず済ませた。
急いでまた電車に乗り実家へ。
玄関を開けると父がいるではないか。
神経質な父は母に保険証を預けるのが心配で結局私が行くまで
家にいたそうだ。
それだったら父が連れて行ってくれれば良いのに。
思わずむっとしてしまった。
2人ともあなたは何もしてくれなくていい、とか
そんなこと自分でするからとか言って、、、
結局のところ私に頼っているではないか。
二時までに母を歯医者に連れて行かなくてはならない。
急いで家を出たけれど、母の歩行がままならないのだ。
カラダを大きく左に傾けているのに杖は右手に持って、、、
その姿勢のまま前のめりで、まるでパーキンソン病の方のような
小走りで今にも転びそうな歩き方をする。
こんなんではいつ転んでもおかしくない感じだ。
「ねえ、、、もうすぐシルバーカーが届くよ、絶対に使ってね」(私)
「あんなみっともないもの使いなら家にいた方が良い」(母)
「お墓参りだって一緒に行こうって言ってたよね、、、
あと青山のまえに行っていた美容室も私がついて行ってあげるから
今度予約を入れるんでしょ?遠くに行くのにとっても疲れるから、
杖だけだといけないんだよ。その練習のためにも届いたらすぐ
使ってみないとダメなんだからね、わかった?」(私)
母は絶対に返事をしない、、、歯医者への道のりは
まるでけんかして歩く親子のようになってしまった。
歩く道すがら転んでもいいやと思っていた。
そうしたらそれ見たことかと使ってもらえるから、、、。
「どう見たって年をとったおばあちゃんなんだからね。
シルバーカー持とうが持ちまいが変わらないんだから。
かっこつけてもむだなの!
転んだ時親切に起こしてくれる人たちだって
親切だからじゃないんだからね。
近くで転ばれたら迷惑なだけなんだから。」
私の思いがわかってくれない母にだんだん
醜いことを言ってしまっていた。
歯医者について待合室で待つ母がぽつりと、
「あなたも私の年になったら今のこの
私の気持ちがわかるんだからね、、、」という。
何故私のこの心配する気持ちをわかってくれないのだろう。
あんなに転んだではないか、現に今だって顔にあざがある。
それを笑って「転んじゃったの〜、大変だったね〜」
で済ませる他人事にできるんだったらこんなに苦労はしない。
「あなたに迷惑はかけないよ、私はシルバーカーだけは嫌なんだ。」
ふん、そういって寝たきりになったら
全部丸抱えで私に責任が掛かってくるんだから。
ほどなく診察に呼ばれて治療をしてもらう。
あとで先生が「歯はとれていませんでした。
入れ歯のひびが入った部分を治しておきました」という。
きっと何かの食べ残しが口から出て、それを歯だと
思いこんでしまったのか。
実家に母を連れて帰り買い物のあと急いで作った茄子の煮びたしと
買ってきた餃子を冷蔵庫に入れた。
最近は食材が入った容器にかけたラップに
マジックで何が入っているかを書くようにしている。
まだ口げんかモードが漂っていたので帰るよとも声もかけずに
無言で実家を出た。私もだいぶストレスがたまっているんだなぁ。
家について冷静になると何であんなひどいことを
母に言ってしまったのかと悲しい気持ちになってきた。
私はいったい母にどうしてほしいんだろう。
母は母なりに一生懸命に生きようとしているではないか、、、。
それをいろいろと危ないからと押さえつけて自由を奪い、
手を出し、自分でやろうとする意欲を奪い、
ますますお年寄りに仕立ててしまっているのではないか。
私はいったい何をやっているのだろう、、、。



夕食は丸どりチキンとトマトのベーコン巻、ピクルスでした。
↓もしよかったら
ぽちしてね。
なんとかがんばれそうだから、、、。




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